分析事例

多層フィルムの構造解析(ラマン分光法)

電子機器や食品包装などに使用されているフィルムには、ガスバリア性、柔軟性などの機能を有するために、複数の層を積層した多層構造のものがあります。フィルムの各層の組成を把握するには、ラマン分光分析が有効です。
ここでは、ラマンイメージングによる多層フィルムの構造解析事例をご紹介します。

分析試料

  • 市販圧力調理バッグ

分析方法

  • ラマンイメージング 励起レーザー波長:532nm
    (レニショー製 inViaTM Qontor®)

分析結果

ウルトラミクロトームを用いて断面を作製した多層フィルムの断面の光学像とラマンイメージの重ね合わせを図1に、各層のラマンスペクトルを図2に示します。光学像とラマンイメージから11層が確認され、各層のラマンスペクトルからA,E,Kはポリエチレンテレフタレート(PET)、B,D,F,Jはポリウレタン(PU)、C,Iはポリプロピレン(PP)、G,Hはポリエチレン(PE)であることが分かりました。また、G,Hはそれぞれの2880cm-1付近(CH2逆対称伸縮由来)と2850cm-1付近(CH2対称伸縮由来)のピーク強度から、Gが高密度ポリエチレン(HDPE)、Hが低密度ポリエチレン(LDPE)と識別できました。

図1 多層フィルムの断面の光学像とラマンイメージの重ね合わせ
図2 各層のラマンスペクトル

まとめ

ラマンイメージングにより、多層フィルムの構造を可視化し、1μm程度の層の組成まで明確にすることが可能です。